IDEA

大型施設で「住まい」を再現

Writer:Yuko Shibata

ユニット型特別養護老人ホームに勤務する方からの投稿です。

ユニット型特別養護老人ホームで「住まい感」を作り出す

私たちユニット型特別養護老人ホームでは、利用者さんに施設内でも生活を「ご自身の住まい」での生活に近づけられるようにたくさんの小さな工夫をしています。

1.ポストの設置
渡り廊下のユニット入口のドアの前にポストを設置し、毎朝、利用者さんに新聞を取りにいってもらうようにしています。(画像はその工夫)

2.玄関の雰囲気を演出
ユニットの入口ドアの室内側に下駄箱を設置し、上部に植木鉢を飾り「ここから、外ですよ」といった住居の玄関のイメージを再現しています。施設周辺の散歩の際にそこから外履きを履いてもらいます。

3.外を眺めるの室内スペース
渡り廊下の窓際の見晴らしが良いので、テーブルと椅子を置いて、日光浴を楽しみながらおやつタイムができるようにしました。

次は、行燈風のお部屋の表示ランプカバーを作るつもりです。手間がかかるので、まだ着手できていません(笑)(投稿者:匿名)

〜編集部より〜
大型の特別養護老人ホームでは、外部との関わりが減少し、日々の変化や四季の移ろいを感じる機会が少なくなりがちです。

こうした環境の中で、「住まい感」を大切にするためには、小さな工夫の積み重ねが欠かせません。住居のしつらえに似せることで、利用者が親しみを感じられる空間をつくるだけでなく、「外部とのつながりを感じられる工夫」「散歩の楽しみを思い出せる仕掛け」「外を眺める機会を増やす取り組み」など、日々の暮らしに彩りを添える工夫が求められます。

もともと、家庭的な雰囲気を重視して設計されたユニット型特別養護老人ホームですが、2021年の介護報酬改定により、1ユニットの定員が10人から15人に引き上げられ、「住まい感」を保つことがますます難しくなっています。今後の施設設計では、こうした工夫をより一層取り入れながら、利用者が安心して過ごせる「暮らしの場」をつくることが重要になっていくのではないでしょうか。

柴田木綿子Yuko Shibata

建築家/合同会社柴田木綿子建築設計事務所代表、ことととぶき発行人
1979年滋賀県生まれ。京都精華大学芸術学部建築分野卒業。吉村靖孝建築設計事務所を経てしばたゆうこ事務所設立。建築設計にとどまらず、デザイン監修、共同研究なども請け負う。吉村靖孝建築設計事務所在籍時にシニア向け分譲マンション 「ソレイユプロジェクト」の設計を担当。独立後の養護老人ホーム設計などを経て、高齢者施設抱える様々な問題に触れる。INSIDE FESTIVAL 2011 residential 部門 2nd、Design For ASIA 2011 Merit Recording受賞。高齢者施設の設計に関わる環境を改善するため、ことととぶきを発行。ことととぶきでグッドデザイン賞2024受賞。