IDEA

毎日14時を知らせるきらめき

Writer:Yuko Shibata

感情環境デザイナーとして施設設計に参画されている杉本聡恵さんのアイデアです

高窓に設置した小さな仕掛け

看護小規模多機能居宅介護の施設の多目的トイレの高窓の内側に小さなミラーボールの連なりをつけました。毎日14時頃になると、窓から入った光がミラーボールに当たり、反射しながら優しいきらめきを映しだします。

上を向くと姿勢がよくなり、前向きな気持ちになると言われています。この施設では、末期の癌の方など、心や体の痛みと不安を抱えている方が多いので、一人でこもれるトイレで、ふと我に返る時に、それらが少しでも和らいでくれたら…という願いを込めて仕掛けました。

〜編集部より〜
室内で過ごすことが多い高齢者にとって季節感や時間の流れを感じられるのはとても大切。この施設では窓のささやかな仕掛によって、それを作り出すことに成功しています。ゆっくり光を眺めながら過ごせるように、座りやすい椅子が置かれていたり、反射光を眩しく感じることのないように、光が落ちる壁を落ち着いた緑色にするなど、仕掛けを楽しむために周辺の環境も整えられています。

杉本 聡恵Satoe Sugimoto

エンプラス株式会社 代表/感情環境デザイナー/作業療法士/IEE教育環境研究所 客員研究員
1972年 山口県生まれ。広島県育ち。大阪府在住。病院・介護施設での企画・運営を経験した後、作業療法士となる。心身が低迷する方たちの気力を高めるためには、ケア力だけでなく、環境力との掛け合わせによる相乗作用が不可欠だと痛感する。「心が生き続けること」を根幹に据えた医療福祉の環境デザインを考えるエンプラス株式会社を2011年設立。人が行動する最も強い動機である感情が動くことを軸とした、「感情環境デザイン」を軸に介護施設のプランニングなどを手がける。