IDEA

パンデミックが作り出した新しいお出迎え

Writer:Yuko Shibata

交流と感染対策の調和

近年、高齢者施設は外部との交流を促す開放的な施設が増加しています。しかしながら、新型コロナウイルスの影響により、施設内では家族との面会が難しくなるなど、一時的に閉鎖的な状況が生まれました。アフターコロナの時代においては、こうした状況にあっても、できるだけ日常生活を維持できるよう、施設の設計において重要な変化が見られます。

特に注目されているのは、玄関だけでなく、施設に数箇所ある各出入口に小さな手洗い設備を備える取り組みです。これにより、外部からのウイルスや感染症を効果的に防ぐことが期待されています。これまで以上に衛生管理に重点を置くことで、利用者だけでなく介護スタッフにも安心を提供することができます。

画像は、以前記事の中でご紹介した看多機ホーム・グループホーム「みそのっこ」のサブエントランス部分。画像奥に、中庭が見えています。中庭の向こうには学生のための居住棟があり、中庭では地域住民も集って、様々な交流が生まれています。みそのっこでは、隅っこに追いやられがちな手洗いを部屋の内側に引き込み、対面式にすることで、室内からの手洗いへの視認性を高めています。また、入口から少し入った広い場所に設置することで、車椅子の方でも使いやすい構成になっています。

アフターコロナの時代においても、外部との交流を大切にしながら同時に感染症対策を徹底することで、高齢者たちの充実した日常を支える仕組みが一層重要視されるようになりました。

柴田木綿子Yuko Shibata

建築家/合同会社柴田木綿子建築設計事務所代表、ことととぶき発行人
1979年滋賀県生まれ。京都精華大学芸術学部建築分野卒業。吉村靖孝建築設計事務所を経てしばたゆうこ事務所設立。建築設計にとどまらず、デザイン監修、共同研究なども請け負う。吉村靖孝建築設計事務所在籍時にシニア向け分譲マンション 「ソレイユプロジェクト」の設計を担当。独立後の養護老人ホーム設計などを経て、高齢者施設抱える様々な問題に触れる。INSIDE FESTIVAL 2011 residential 部門 2nd、Design For ASIA 2011 Merit Recording受賞。高齢者施設の設計に関わる環境を改善するため、ことととぶきを発行。