IDEA

私の部屋はどーこだ

Writer:Yuko Shibata

「私の部屋」を「私」に知らせる

以前、取材に伺った尾道の事業者、株式会社ゆずが新しい施設を作りました。今回は、その施設、看多機ホーム・グループホーム「みそのっこ」の見学に伺いました。画像は、グループホームの個室の入口のひとコマ。特徴的な表札は、磁器質タイルによるもので、個室毎に違う雰囲気のものを設置し、入口に個性を演出します。名前は入居者が変わるたびに手書きで記され、手作りの温かみが良い雰囲気を作り出しています。入居者が好きなものを掛けることができるように設置された壁の丸いフックは、表札に立てかけられている入居者が描いた絵と同様、入居者に自分の部屋を知らせるサインの役割を果たします。一般的には単調になりがちな廊下エリアですが、ささやかな仕掛けによって、入居者の個性が感じられるように配慮がなされています。

こういった工夫が必要な理由は、認知症の進行によって自分の位置や部屋がわからなくなり、混乱する可能性があるためです。

同様のケースがオランダにも存在し、高齢者施設で役立つ商品があります。「True Doors」というその商品は、施設のドアの外観を手軽に「自宅の扉の外観」に変えることができる装飾シート。利用者はカタログ上のたくさんの扉のプリントの中から、自宅の扉に似ているものを探すか、メーカーに自宅の扉の写真を送り、それを元に装飾シートを作ってもらうか、選ぶことができます。

オランダの事例➡️➡️➡️➡️➡️➡️👭👬Youtube”How to help seniors feel at home - A True Doors Transformation”👭👬

柴田木綿子Yuko Shibata

建築家/合同会社柴田木綿子建築設計事務所代表、ことととぶき発行人
1979年滋賀県生まれ。京都精華大学芸術学部建築分野卒業。吉村靖孝建築設計事務所を経てしばたゆうこ事務所設立。建築設計にとどまらず、デザイン監修、共同研究なども請け負う。吉村靖孝建築設計事務所在籍時にシニア向け分譲マンション 「ソレイユプロジェクト」の設計を担当。独立後の養護老人ホーム設計などを経て、高齢者施設抱える様々な問題に触れる。INSIDE FESTIVAL 2011 residential 部門 2nd、Design For ASIA 2011 Merit Recording受賞。高齢者施設の設計に関わる環境を改善するため、ことととぶきを発行。