IDEA

空想提案:シーンの変化を受け止める収納

Writer:Yuko Shibata Designer:Yuko Shibata Architects

全国の高齢者施設を取材していると、現場の方々から空間に関するさまざまな相談を受けることがあります。ことととぶきでは、そうした取材の現場で生まれた「困りごと」と、それを解消するためのアイデアを、新連載として紹介していきます。

今回は、以前も取材に伺った青森県八戸市の「無添加お弁当二重まる一番町(以下二重まる)」を取り上げます。 デイサービスを運営するこの施設で、取材中にスタッフの方からこんな相談を受けました。

この記事は『バリアフリーより多様性を受け入れるしつらえを—高齢者や障害者を元気にする共生型「はたらくデイサービス」』と合わせてお読みください。

デイサービスでの困りごと

「1日のうちに何度か空間の使い方を変えなければならない」

私たちのデイサービスので提供するサービスの内容が多様なので、1日の中でテーブルや備品を何度も移動しなければならないんです。そのうえ、作業によっては段ボールなどの大きな荷物が頻繁に出入りし、収納スペースが足りていません。

限られた空間で多彩な活動を行うデイサービス「二重まる」にとって、場を即座に変化させられるかどうかは、日々の運営の質を大きく左右します。そこで今回は、部屋の角に荷物置き場として使われていたスペースを活かし、L字型の収納スペースを新設する提案をしました。

まず、天井まで届く衝立を立て、その中央に高さ180cmの棚板を設置します。この高さであれば、リクライニングチェアなどの大型家具も棚下に収納可能です。また、市販の棚を組み合わせれば、収納方法を用途に応じて自在に変更できます。

さらに、収納部分は扉ではなくカーテンで覆います。扉だと開閉に手間がかかりますが、カーテンならサッと開閉でき、出し入れもスムーズ。ざっくりと隠しながらも機能的に使えます。今回は銀色のカーテンを採用し、美容サービスを受ける際の背景がまるで銀の屏風のような印象になります。

このような「見せない収納」は小さな工夫ながら、限られたスペースを有効活用するうえで大きな効果を発揮します。さらに中央のテーブルをキャスター付きに変更すれば、移動も容易になり、空間の機能性は一層向上。日々の作業がより快適で効率的になるはずです。

柴田木綿子Yuko Shibata

建築家/合同会社柴田木綿子建築設計事務所代表、ことととぶき発行人
1979年滋賀県生まれ。京都精華大学芸術学部建築分野卒業。吉村靖孝建築設計事務所を経てしばたゆうこ事務所設立。建築設計にとどまらず、デザイン監修、共同研究なども請け負う。吉村靖孝建築設計事務所在籍時にシニア向け分譲マンション 「ソレイユプロジェクト」の設計を担当。独立後の養護老人ホーム設計などを経て、高齢者施設抱える様々な問題に触れる。INSIDE FESTIVAL 2011 residential 部門 2nd、Design For ASIA 2011 Merit Recording受賞。高齢者施設の設計に関わる環境を改善するため、ことととぶきを発行。ことととぶきでグッドデザイン賞2024受賞。